おととい国立競技場で熱唱したユーミンこと松任谷由実さんに「ジャコビニ彗星(すいせい)の日」という歌がある。歌詞に日付が出てくる。1972年10月9日。前日の夜からこの日の未明にかけて、火の粉のように流れ星が降るといわれた▼ジャコビニ・ジンナー彗星が残していった微小なちりの群れを地球がかすめ、ちりが大気圏に飛び込んで摩擦で光る。「世紀の流星雨」と本紙も予測記事を書いた。ネオンや照明を消す「平和な灯火管制」が全国に広がったというから期待の大きさが分かる▼結果は、空振りだった。シベリアからも見えなかったとユーミンの歌にもある。「星占いはニガ手?天文台」「計算正しかったが……権威失墜」と一夜明けた本紙は嘆いた。筆者など、同級の天文好きのがっかり顔を今も思い出す▼時は流れて、期待を集めたアイソン彗星の存亡である。こちらは彗星本体だが、太陽に近づいて熱で崩壊したのは間違いないそうだ。国立天文台に聞くと、肉眼で見ることはもはや望めないという▼彗星は水ものと言われ、明るさの予測が難しいと先日の小欄に書いた。マスコミが騒ぐと空振り、というジンクスもあるらしい。こぞって「世紀の大彗星」とやり過ぎたか。過大な期待につぶれたドラフト1位を思わせて少し切ない▼ところで50代半ばになった同級の天文小僧、どこかの空の下でまた落胆していようか。それとも世事に追われて空など忘れてしまったか。ほうき星は消えて、懐旧の流星が胸をかすめる。