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コラム

イスラーム世界は今

第28回 ブルネイで、小さな国の幸せを考える

小杉 泰

 1年ぶりに、ブルネイにやってきた。乗り換え時間を除けば、日本から6~7時間で到着する。首都と首都の間を計測するならば、日本に一番近いイスラーム国である。

 その上、日本に天然ガス、石油をずいぶんたくさん供給している。両国関係はきわめて良好で、さらに日本とブルネイの間の航路は安全で、供給の安心度も非常に高い。ところが、今のところ、日本でのブルネイの知名度はかなり低い。先日、TPPの交渉がブルネイの首都で開催された。その時に「どこ?」と思って、あらためて地図を確認した方もいると思う。

 ボルネオ島の東部に位置し、東、南、西側の国境をマレーシア領に囲まれている。地元で聞くと、ボルネオの名は、もともとの「ブルネイ」をヨーロッパ人が訛って伝えたものだという。その分だけ、歴史の古さに矜持を持っている様子が伺える。

 今回の訪問は、私の勤める京都大学の大学院(アジア・アフリカ地域研究研究科)とブルネイ・ダルッサラーム大学(UBD、以下ブルネイ大学)のイスラーム研究センターが共同で国際セミナーを開催するためであった。イスラーム研究センターというと研究施設のようであるが、実際にはイスラーム研究大学院なので、セミナーも大学院生が主体のものとなった。
 王国らしく、このセンターには先王の名が記念され、正式にはスルタン・オマル・アリ・サイフッディン ・イスラーム研究センター(SOASCIS)という。ブルネイ大学は国で一番古く一番大きな大学であるが、センターは新設されてわずかに2年が過ぎたところである。教員と大学院生は国際色豊かな構成で、ブルネイ人のほかにインドネシア人、バングラデシュ人、ガーナ人、キルギス人、ドイツ人など多彩な顔ぶれとなっている。所長のオスマン・バカル教授はマレーシアの出身で、何度も訪日したことがある。私にとっては30年に及ぶ知己なので、話も通じやすい。

 セミナーの主題は、グロ―バル化時代を迎えた現在、どのようなイスラーム研究を追究すべきかというものであった。イスラーム世界の現状は、イスラーム復興が一段落する一方、9・11以降の欧米との摩擦もあって、むずかしい時期が続いている。研究の方は、かつての西欧が中心であった古い時代から、アメリカが主流の時代を過ぎ、今や特定の中心地がなくなっているうえに、先進国からイスラーム圏を一方的に研究するというわけにもいかなくなった。
 一言でいえば、グローバル時代にふさわしい理解が必要とされている。そこで、日本や東南アジアから新しいイスラーム研究の方向性を発信しようという提言をおこなった。これを「アジアからの発信」と呼んでいる。このアジアとは、「もともと非西洋ではあるが、すでに近代化を遂げたアジア」を

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小杉 泰(こすぎ・やすし)

 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科教授、同附属イスラーム地域研究センター長。1953年、北海道生まれ。日本中東学会会長、日本比較政治学会理事、日本学術会議会員などを歴任。専門はイスラーム学・中東地域研究・国際関係学。近年はグローバルな現代イスラーム世界論に取り組んでいる。主著に『イスラームとは何か』『現代中東とイスラーム政治』『現代イスラーム世界論』『イスラーム銀行――国際経済と金融』(共著)など。

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